お子さんの歯並びの発達段階と矯正のタイミング

1、歯の発育と矯正の関係お子さんの歯並びの成長段階

 

お子さんの歯並びは、成長と共に変化しますが、そこにはとても複雑なプロセスがあります。歯の発育段階を理解することは、矯正治療の適切なタイミングを見極めるうえでとても重要です。ここでは、お子さんの歯並びの発達段階と矯正治療の関係について解説します。

 

1)乳歯が発育する時期(0~6歳)

乳歯は、おおよそ6歳までに生えそろいます。この段階では、歯並びに問題が見られた場合でも、まだ矯正は行いません。それは、お子さんのあごの骨や歯が成長中であり、将来的な歯並びの変化が予測しづらいこと、またあごが大きくなる場合は矯正治療が不要になるかもしれないためです。

 

2)永久歯の生え変わり(6~12歳)

6歳頃から永久歯が生え始めます。まずは第一大臼歯が生えてきます。12歳までにほぼ全ての永久歯が生えそろいます。この時期は、歯並びに関する問題が目立ってくるようになります。歯並びの異常やかみ合わせの問題が見られた場合、歯科医師は適切な矯正の必要性を説明します。あごの横幅を広げたり(歯列弓の側方拡大)、下あごの成長速度を上あごの成長速度と合わせるような処置をすることがあります。

 

3)急成長期(12~16歳)

思春期に入ると、お子さんの成長が急激に進みます。この時期には、歯やあごの発育も活発に行われ、歯並びに関する問題が大きく目立ってなることがあります。矯正治療は、この時期に行われることが一般的であり、成長に合わせて歯を調整することが可能です。特に、あごの大きさに上下で差が出そうな場合は、手術であごの骨を切って動かす方法を念頭にした矯正を行うこともあります。

 

4)成人期以降(16歳以降)

成人期に入ると、歯や骨の成長が鈍りますが、矯正治療は可能です。しかし、成人期になると骨が硬化しているため、矯正治療の期間はやや長くなることがあります。矯正治療の適応や進み具合は、個々の状況によって異なります。

 

 

2、早めの観察が大切:お子さんの歯並びの乱れの初期段階のサイン

 

保護者はお子さんの歯並びの発達段階を理解し、日々歯並びを観察していくことが重要です。初期段階での歯並びの乱れのサインを見逃さずに捉えることが、将来の矯正治療の成功につながります。早めの観察が大切な理由とお子さんの歯並びの初期段階のサインについて説明します。

 

1)日々の歯並びの観察の重要性

お子さんの歯並びの問題は、なるべく早い段階で発見し、適切なタイミングで対処することが重要です。早期の矯正治療は、歯やあごの成長に合わせて行われるため、よりスピーディで効果的な結果が期待できます。保護者がお子さんの歯の健康状態を常に意識し、歯科医師との定期的な相談が欠かせません。

 

2)理想的な歯の生え方のサインとは

お子さんの歯並びにおいては、理想とする歯の生え方に注目することが大切です。歯が規則的に並び、かみ合わせが良好な場合は、理想的な成長発達といえます。しかし、歯と歯の間にすき間が広がりすぎたり、逆に歯が重なっている場合は、歯並びの異常の兆候とみなすことができます。

 

3)不正咬合のサインとは

歯が正しくかみ合わない「不正咬合」は、噛み合わせができるよりも早い段階で注意が必要なサインです。上下の歯が正しく噛み合っていないと、食事や発音、見た目に影響を及ぼします。不正咬合は、歯科医師が早めに診断し、適切な治療を提案することで改善が期待できます。

 

4)乳歯から永久歯の生え変わりの時期

乳歯から永久歯へと生え変わる時期も、歯並びに影響を与える重要なポイントです。歯の生え変わりが進む中、歯科医師はお子さんの歯並びの変化を注意深く観察し、必要に応じて矯正の検討を行います。歯が重ならないか、斜めになっていないか、ちゃんと生えてくるか、左右で生えてくる時期に違いがないか、などです。保護者がお子さんの歯の初期段階から異常な兆候に気づき、歯科医師との連携を大切にすることで、適切なタイミングでの矯正治療が可能となり、お子さんの健やかな歯並びをサポートできます。早めの観察と対応が、将来の歯の健康に大きく影響します。

 

 

3、歯並びに影響を与える生活習慣と発育段階の理解

 

お子さんの歯並びは、生活習慣や発育段階によって大きく影響を受けます。正しい生活習慣を身につけ、歯の発育段階を理解することは、将来の歯並びの健康に寄与します。

 

1.乳幼児期(0~2歳)

歯並びの基礎は乳幼児期に出来るといえます。乳歯が生えるこの時期に、保護者が適切な歯磨きの指導を行うことが重要です。また、保護者の食事習慣や口腔衛生の大切さをお子さんに教え、甘い物の過剰な摂取、だらだらと長時間食べることを制限することが、歯並びの基礎を固めるポイントです。

 

2.幼児期(3~6歳)

永久歯の生え変わりが始まる幼児期には、保護者がお子さんの歯の発育を注視する必要があります。この時期には、舌や口のまわりの筋肉の発達が歯並びに影響を与える可能性があります。規則的な食事を通じて、お口の機能の向上を促すことが重要です。

 

3.小学校低学年(6~9歳)

永久歯が増えるこの時期には、保護者が歯科医師と協力し、お子さんの歯の状態を確認することが重要です。不正咬合や歯の生え変わりの遅れが見られる場合は、早めの矯正治療の検討が必要です。

 

4.小学校高学年(10~12歳)

歯の発育がピークに達するこの時期には、お子さん自身も歯並びに注意することが求められます。矯正治療が必要な場合、歯科医師が適切な治療法を提案します。保護者やお子さんが治療に協力することで、効果的な結果が期待できます。

 

5.思春期以降(13歳以上)

思春期以降も歯の成長が続きますが、この時期には骨が硬くなるため、矯正治療がやや難しくなります。しかし、この時期であっても、歯科医師と協力して理想的な歯並びを目指すことは重要です。

 

 

小児矯正のメリット:歯並びの問題を未然に防ぐ

 

お子さんの歯並びに関する問題を未然に防ぐためには、早期に矯正を開始することがお勧めです。早い段階で歯並びの異常を発見し、適切なタイミングで治療に取り組むことで、将来的な歯の健康を確保するメリットがあります。

 

1)正常なお口の発育に導く

早期矯正は、歯と顎の発育が進む初期段階で行われるため、歯が正常な位置に適切に配置されるように導きます。この段階での矯正は、将来の歯並びの問題を防ぐ基盤を築くことにつながります。

 

2)不正咬合を予防する

歯並びの問題には、不正咬合や顎の成長不足などが含まれます。これらの問題が早い段階で矯正されることで、正しいかみ合わせが形成され、噛む力が均等に分散されるようになります。不正咬合の修正は、歯や口腔の健康を保つ上で非常に重要です。

 

3)理想的な口腔機能へと改善できる

歯が正しい位置に配置されることで、口腔機能も改善されます。発音や噛む力の向上は、お子さんの健康な成長に寄与します。また、口腔機能が正常であることは、将来的な歯や顎の問題を予防する一助となります。

 

4)心理的なメリットも大きい

早期矯正により歯並びの改善が見られると、お子さんの自尊心や自信が向上することがあります。他のお子さんたちとの比較、からかいなどから解放され、心理的な負担が軽減されることが期待できます。

 

5)矯正治療期間が短縮できる

早期に歯並びの問題にアプローチすることで、矯正治療期間が短縮されることがあります。歯や顎が成長途中の段階での矯正は、効果的で迅速な結果を生むことができます。

 

監修 歯科医師 竹内勝泉